トスカの接吻 オペラ・ミステリオーザ (講談社ノベルス)
 前作「エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ (講談社ノベルス)」同様、芸術をメインに仕立てたアートミステリー。シリーズ物としての認識で良いのかな。今回はオペラネタです。一般の人はやはり疎いであろうオペラを丁寧にしかも詳細に紹介し、謎にも絡むという展開はお見事です。ただ、前作の絵画は興味持てたのですが本作はいまひとつノメりこめず。ミステリー部もエコールのほうが面白かったです。というか本筋よりミステリーや文章の読み方など本格にとっても新たな道を提示している箇所のほうが興味深かったですね。いわゆるオーソドックスな本格ミステリーが尻すぼみになってきて、「神は細部に宿る」ではないですけどこの作者のようにある部分に特化した物語の魅せ方も今後のミステリ界でサバイブする術の一つなのかもと感心します。読み物としても良い出来なのでこれからも見逃せない作家さんですね。次は彫刻とか音楽かな。ジャズを絡めた長篇だったら嬉しいな。