完全恋愛
 既に各所で話題の一大ラブロマンス本格ミステリがとても面白かったです。昨年の「収穫祭」「密室キングダム」あとは「赤朽葉家の伝説」なんかのテイストを持ち合わせた壮大な物語でした。結構な長さですが文章が非常にスマートかつキレイなので読みにくさはありません。読み終わってみると伏線やヒントはあからさまにそこここに存在しているのに、すっかりヤラれました。第3の殺人のトリックは唐突な気がしましたが。ラストの反転も鮮やかでなんで気づかなかったんだろうと唸らされましたね。最後の風景はタイトルをグっと濃縮したような憂いと侘しさと余韻があって凄く胸に刺さりました。素晴らしい作品ですね。人間を描くネクストレベルの本格ミステリが徐々に登場し今年は道尾秀介の「ラットマン」がありましたが、話の面白さや情感などを加味すると自分は本作に軍配を挙げる、かも。巨匠による次代の新本格、昨年の「首無」と共に本格ミステリの新境地を切り拓く作品だと思いました。