エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ (講談社ノベルス)
 デビュー作はメフィスト賞らしくキワモン的な扱いで少々辟易したとこもありましたが、本作は端正で趣向を凝らした快作になっています。面白かった。作中作というと昨年のミステリーリーグの留美が記憶にありますが、あれは作中作自体がクソつまらなくて読むことが苦痛に等しかったのに対し、こちらはとても興味を引かれる内容で薀蓄も嫌味じゃないししかもバッチリと謎とトリックにも絡んでくると立派な出来です。密室トリックは勘付きましたが、呪われた芸術家たちの扱い方は新鮮でしたね。事件の裏に潜む幾重にも重なった真相も悲しすぎる。芸術論が楽しくてスーチンは是非覚えておこうと思いました。余裕で本格ミステリベスト20級。