螻蛄
 今年一番楽しみにしていた疫病神シリーズ第四弾が当然のように面白い。
 今回は東京進出というお話はあるものの、基本的には金筋極道・桑原が半堅気・二宮を相棒にして騙し騙され殴り殴られといったいつものエピソードでかっとばす。そのへんは新宿鮫や隠蔽捜査シリーズとも似通っている。だのでメインストーリーに目新しさや意外性はあまり無いのだけど、この作品の肝は桑原、二宮コンビによるキレキレの会話だ。黒川博行作品は大体登場人物のやり取りが面白いと思うがやはり本シリーズは別格。関西弁が苦手な人はかなり毛嫌いしてしまいそうな濃厚さ。特にヤクザ桑原の関西弁はかなりハードコアでドギツク、好きモンには堪らんでしょう。
 結構なボリュームな長編ですが、毎ページ毎ページこれほどニヤニヤしながら本を読んだのはひさしぶり。桑原登場シーンでは本当にニヤケ顔になってしまった。奈津川兄弟、竜崎、チナスキーと並んで大好きなキャラです。ベテラン作家さんにも関わらずあまり読まれていないような気がするのが残念。前3作と合わせてもっと多くの人に読んで欲しいなぁ。丁々発止のやりとりってのはこうゆうことですよ。