ラットマン
 面白かったです。とてもよく出来ていて水準以上の作品なのは間違いないですね。ただねぇ、毎回感じる道尾作品独特のあざとさが本作でも全面に出ちゃってるんだよなぁ。お得意の怒涛の伏線回収も多数の反転もバッチリキマってはいるのですが、その驚きがタイムスケジュールぴったりの小出し感がムンムンで少々グッタリしてしまう。ミステリーは基本そういうもんだと思いますが、スマートさが足りなかったのかな。オリバと龍書文ではないけれど。最先端の本格とか21世紀のなんとかとかゆってる書評を見かけましたが、十分オーソドックスで伝統的な本格作品だと思いますよ。
 一撃必殺の反転に賭けた麻耶「神様ゲーム」やミステリーデンプシーロールな三津田「首無」並のカタルシスがあれば代表作にも成りえたかも。分散しすぎたのかな。贅沢か。全体の作風はシャドウ+黒ソロモンといった印象。それでも十分すぎるほどに本格ミステリベスト10級。