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江神シリーズの最新作は大長編で登場である。城に突入するまでが長いのだけど読みやすい文体なので許す。城内部での動きは十分描かれているのに人類協会の異様な雰囲気があまり伝わってこないのが残念。クライマックスはやはり「読者への挑戦」後の関係者を集めた謎解きである。じっくりと時間をかけて解きほぐすさまに緊張感が高まる。こういったオーソドックスなミステリーらしいドキドキ感を味わえるのは最近ではなかなか無いので貴重だと思う。今回は犯人当てより動機と凶器の謎が結構面白かったな。新本格にありがちな安易な叙述を用いない正攻法による本格ミステリはファンならずとも嬉しい限り。
http://www.harashobo.co.jp/mystery/myrank08.htm
女王国も読んだので本格ミステリベストに投票。
1位 『首無の如き祟るもの』 三津田信三
2位 『首鳴き鬼の島』 石崎幸二
3位 『インシテミル』 米澤穂信
4位 『密室キングダム』 柄刀一
5位 『晩餐は「檻」のなかで』 関田涙
『首無の如き祟るもの』は初読時のインパクトが凄まじかったので。首切り物の金字塔となるのは間違いない。
『首鳴き鬼の島』は新本格を新たなレベルへと押し上げる意欲作で、『インシテミル』は先人たちを過去へと葬る野心作。両者は正反対のベクトルながら今後の本格ミステリの指針となるべき作品である。
ベテランによる大長編が際立ったが『密室キングダム』から発せられる強力な磁場とハードコアっぷりに一票。
わかっちゃいるけど騙されるということで『晩餐は「檻」のなかで』を挙げてみた。
次点としては『女王国の城』『ハッピーエンドにさよならを』『ソロモンの犬』『Rのつく月には気をつけよう』が良かった。