パパ旦那

Aquemini

 ATCQの作品群から一枚選べと言われれば、まず間違いなく自分は「The Low End Theory」をチョイスする。アウトキャストに関して言えば今作がそれにあたる。オーガナイズド・ノイズからプロダクションを彼ら自身が受け継ぐことによって90年代屈指の作品となっている。アウトキャストのヒップホップからのブラックミュージック総括盤だと断言出来る。
 ゲストは最小限かつ黒汁出まくりの人選となっている。Raekwon、Goodie Mob、Erykah Badu、御大George ClintonCee-Loだけ特別扱いっぽいのが笑える。個々の楽曲の素晴らしさは言うまでもない。個人の好みなので、どうとでも言えるが、今作は捨て曲なし。スキップなしで聴ける数少ないヒップホップアルバムの一枚だ。というか、他を考えてみたら、Nasのファーストとトライブのセカンドしか思い当たらん。
 トラックは極端に重くシリアスなのだが、2人のラップ及びヴォーカルが異様にコミカルなので不思議と聴きやすい。のだが、「Tr.2 Return Of The "G"」のキックの太さと言ったらハンパない。自分はこの曲聴きながら高層ビルを望むのが大好きだ。なんつーか、権力に抵抗するような感じ。アナーキーな。中毒性のあるコーラスが印象的な「Tr.8 West Savannah」「Tr.11 Mamacita」もかっこいいし、「Tr.6 Synthesizer」みたいなMC全員弛緩しまくりな曲もヤバイ。アウトキャストと並ぶ南部の雄・Googie Mobがフックアップする「Tr.13 Y'all Scared」「Tr.15 Liberation」は墨汁みたいなファンク汁が垂れ流しになっていて超強力グルーヴに溢れて零れてる。ラス曲「Tr.16 Chonkyfire」はハードロッキンなアグレッシブトラックでとにかく魅力的だ。
 つーか、全曲素晴らし過ぎなのでヒップホップ好きは確実に押さえておくべき。このあとのアルバム二枚よりこっちだから。ヒップホップ?そんな枠じゃねぇな。90年代ブラックミュージックでも五指に入る。アウトキャストの2人の全身から黒風と黒汁が噴出しまくった名盤。中古ではほとんど出回らないので新品でいっとけ!

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