荒野
 面白かったー。
 文章が好きな作家さんが二人います。舞城王太郎黒川博行です。前者は邦文学に新たなビートを刻んだフリースタイル小説だし、後者は小気味良くセンス抜群な会話が最高。その両者に本日桜庭一樹が加わりそうな勢いだ。うつくしい日本語をうつくしい文章に仕立て上げていて素晴らしいですね。森博嗣のように読み飛ばしても内容が理解出来るような読みやすさではなく、一語一語を丁寧に記憶に留めておきたくなるようなリーダビリティ。おんなの、うつくしさも、冷酷さも、愚かさも、わけのわからなさも、とりとめのなさも、どれもがキラキラして印象的で非常に面白かったです。おとこもおんなも、きっと楽しめます。これほどの表現が出来る桜庭一樹も何かを犠牲にしているハングリー・アーティストなのかな。
 あと、主人公荒野のボーイフレンド、悠也がよくジャズを聴いているんですが、アーティスト名はひとつも出ないんですよね。水音って表現があったので、自分はレッド・ガーランドかなと思いました。ウィントン・ケリーホレス・シルバーではないような気がします。トランペットはマイルス、かトニー・フラッセラ。