山魔の如き嗤うもの (ミステリー・リーグ)
 昨年の「首無」で一気に本格ミステリ最前線に躍り出た三津田信三の待望の新作である。出るか分からんが麻耶たんの新作と共に2008年非常に楽しみにしていたミステリーで期待に胸が高鳴る。ジャケも最高すぎて傑作な気配がぷんぷん。
 で、肝心の中身。怪奇ホラーな前半部に大分力が入っていて、「厭魅」に似た雰囲気がある。ただ、自分想像力がかなり欠如しているせいか全く怖くない。実際「厭魅」より「首無」のほうが好みだし、物語の展開が緩やかなので退屈だったのは否めないかな。物語のポイントは一家消失の謎と連続見立て殺人でそれらを含めた謎をズラっと列挙する例の件もバッチリあります。関係者を集めた大団円では長々と披露した推理をあっさりとひっくり返すいつものアレに新鮮味はない。首無の鮮烈で怒涛のクライマックスには遠く及ばないけど、まぁ水準で妥当な展開かと。
 ホラー色強めなのでマジモノ好きはイケそうですね。また決定的なネタバレではないけど、首無読んでない人は気をつけて欲しい。今回はお得意の構造の把握が困難な建物は出てこないにしても、相変わらず変な読み方が多くリーダビリティの向上は見られず。あまりにも期待していたのでちょっと残念な仕上がりだったかな。