ノーカントリー観てきたよ。
 まずは先日読了したコーマック・マッカーシーの「血と暴力の国」の感想から。世間一般の評価は上々のようだけど、率直に言って楽しめなかったです。面白くなかった、ではなく、楽しめなかった。その大きな要因は作者と読者の物語を通して成されるべきコミュニケーションの断絶によるものだと思った。この作品あまりにも感情が排除されていて血の通いが全くといっていいほど無いのだ。読み手の突き放しが半端ではない。
 文体、特に会話は特異な形式でこれにもマイった。質問に対し質問で返す、といった海外作品のイヤなとこも凝縮されているし感情の起伏が無いせいで気持ちの読み取りも困難だったぜ。ホントに異様な物語でした。ただ、殺し屋とも殺人鬼とも違う殺人者アントン・シュガーの存在感は凄すぎた。
 で、映画。そのシュガー役(映画ではシガーだった)のハビエル・バルデムの怪演が強烈でしたねぇ。結構原作に忠実で淡々とした冷酷な描写がなかなかに興味深い。BGMが全くないのも特徴で音楽を通した感情表現をも殲滅。人の死をドラマチックに描くことなくあっけなく仕上げているのもいいすね。原作にはあった少女との逃避行がなかったのは残念だったけど。あと観てる最中バルデムって「ミザリー」の怖いおばさん(アニーだっけか)に似てんなぁって思った。