生命

Life Story

 2007年のハイライトのひとつになるであろうTha Blue Herb5年ぶり三枚目のオリジナルアルバム。BossもONOも個々の活動は非常に活発だったので不在感はほとんど無いがファンとしてはTBHの新作となれば心躍らないことはないだろう。
 決意表明のファースト、宣戦布告のセカンドときて、サードは「結局愛」になった。以前のように狭義なヒップホップ観に則った攻撃的な噛みつきは鳴りを潜め、もっと対ヒトを意識し自身を吐き出すようなリリックになったと思う。ヴォーカルは既にラップではなく完全なポエトリーディングになり、それはフロウのかっこよさを押し出すことより言葉や意思を相手に深く伝えたい想いに重きを置いた結果だろう。それを深化ととるか撤退ととるかは人それぞれだし、ファーストからのスタイルの変遷を見れば当然の結果なのかなと。
 トラックはセカンドより好きだ。前作はニカ的な刺々しさやザラつきが癇に障ったのだけど、今作はキックも太くてダビーでメランコリーなのもあってなかなかに聴かせる。ただ、ラップも含めてこれってフロアには不向きなんじゃないかと思った。ダンスミュージックファンを自認しているBossとしては、この踊れないトラックをどう思っているのだろう。フロア向きのプロジェクトも組んでいるからTBHでヤル必要は感じなかったのかな。
 1曲1曲というよりはアルバムトータルで聴かせるってゆう姿勢は相変わらずで流石にBGMには成り得ない。ライムの通りも過去最高だし、サッカーネタも盛り込み、TBHとしてやりたい事は今作でだいぶ成し遂げられた印象が相当強い。というわけでまたしばらくはツアーがあったりするから、その後にでももっとヒップホップな事をやって欲しいな。下世話なバウンスものとかラフでタフなサンプリングトラックの上でのライミングを聴きたいね。ともあれ、凄まじい深度と強度を兼ね備えた傑作なのは疑いようがないし、すげぇ売れているみたいなんでいろいろな人に聴いて欲しいと思います。
 http://www.cisco-records.co.jp/html/item/003/025/item280420.html

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